俺は校舎を出て、体育館に向かって歩く。
 

「もっと声出して!」 
 
「「はい!一、二!一、二!」」
 

陸上部らしき生徒たちが、グラウンドのトラックを走っている。

声もゼイゼイしているし、汗も四月なのにだらだらだ。
 

大変そうだなぁ。すごい苦しそうだけど、こういうのやっていて楽しいのか?
 

いや、楽しくなかったらできないか。実質、俺は走るのなんて好きじゃないから、きっとすぐにこんなの止めているだろうし…。


…あれ?でも、俺は別にピアノ楽しいわけじゃないけど、ずっと続けてる。

この陸上部員の人たちみたいに、ハードでも続けれている。なぜだ?
 

体育館前に着くと、中から叫び声が聞こえた。
 

「はい!」
 
「やー!」
 

すごい…。こんな外から聞こえるなんて、どれだけ大きな声を…。
 

恐る恐る中に入ると、真ん中では何組もの人たちが、胴着を着ながら戦っている。
 

パシン!パシン!
 

竹刀の交わる鋭い音が、体育館に響き渡る。


見た感じは、俺が知ってる剣道と変わりないな…。
 

「あれ?見学の子?」
 

入り口で突っ立ってると、胴着を着て髪を後ろに縛った女の人が、俺に話しかけてきた。大人っぽいし、三年生だろう。
 

ドキッ
 

どうしよう。そうだ、俺は人とまともに話せないんじゃないか。
 

情けない…。最近、結構ちゃんと話してたから、余計に初対面の人だと緊張する。