そういえば、ここ最近、家族で笑いあって食事を食べた記憶なんてない。

父さんは毎日仕事で遅いし、母さんは母さんで笑わないし、俺だって一人でいる方が落ち着くし。
 

でも、やっぱりこうやって家族そろって食べる方が、いいのかな…?
 

俺は、なにか置いて行かれた気持ちで、二人を見つめていた。
 

「…ん?どうしたの、日向君?箸進んでないけど、もしかして口に合わなかったかしら?」
 

ぼーっとしてる俺に気づいた向日葵のお母さんは、心配そうに目を向けた。
 

「え?あ、いや、ぜんぜんそんなことないですよ。ただ、なんか幸せそうだなって」
 

あははと笑うと、二人も優しくにっこりと笑う。やっぱり、親子だなと思うくらいに、笑い方が似ていた。
 

「まあ、たまーにうるさすぎることもあるんだけどね」
 

向日葵が舌を出す。俺も、つられて笑ってしまった。
 

「あ、唐揚げ取らないと。お母さん、どこだっけ?」
 

向日葵がまた、腕を動かし始めた。
 

俺は、自分の手をぎゅっと握ると、向日葵のお母さんよりも先に向日葵の腕を握って、唐揚げのところまで、腕を持って行った。
 

「ここだよ、ほら」
 

向日葵のお母さんは、一瞬驚いた表情で俺を見つめたが、すぐにニッコリ笑って頭を下げた。俺も、下げ返す。
 

「わあ、ここだね。ありがとう、日向君」


向日葵は、本当に見えてないのかと思うくらいの手際の良さで唐揚げを取ると、口の中に入れた。
 

ほんと、器用なものだなと思いながら、俺も唐揚げを口の中に放り込んだ。
 

なんだか、久しぶりにおいしいと思った。