なんだか見た瞬間、直感的にそう感じていた。この写真の人にも、向日葵の面影はあるし、なにより休日なのに向日葵のお父さんの姿が見えないのは、そういう事なのかなって思っていた。
 

「ほら、六歳の頃に事故にあったって言ったでしょ?車の事故で、運転してたのが私のお父さんだったの。お父さんの方がもっとひどいケガしちゃって、慌てて病院に運ばれたんだけど、結局間に合わなくてさ…」
 

向日葵は、慣れた手つきで線香に火をつけ、振って消して、香炉にたてる。

目が見えなくてもできるってことは、きっと相当な回数を、向日葵はやっているのだろう。
 

自分は目が見えなくなって、お父さんには死なれて…。
 

外から見る感じでは、なんの悩みもない女の子のように見えるが、俺には考えられないほどの不幸を背負って生きてきたのか。
 

俺は、仏壇に向かって手を合わせ、目を瞑った。
 

「あらあら、ありがとね。気使ってくれて」
 

声がしたと思ったら、後ろから向日葵のお母さんがやってくる。
 

「いえいえ、向日葵のお父さんに挨拶が出来て、俺も嬉しいです」
 
「ほんと、日向君は礼儀正しい子ねぇ」
 

あんまり人から、ピアノ以外の事で褒められたことがなかったため、照れくさくて頭を掻く。
 

すると、横にいた向日葵が、鼻から空気を吸って、顔いっぱいに笑みを浮かべた。
 

「ね、お母さん!今日の昼ごはんって、唐揚げ?」