「あ、あら、こんにちは…」
 
「こんにちは…」
 

声こそは怯えてるように思えた。
 

が、視線は完全に軽蔑や差別をするような、見るに堪えない視線だった。


すぐに俺たちの横を通り過ぎるが、おばさんたちは俺たちの方を見ては何かをぼそぼそと言っていた。
 

な、なんなんだ、あのおばさんたちの無愛想な視線は…
 

…あ、そうか。たぶん、向日葵の瞳と白杖を見て、盲目だと思って引いてしまったんだろう。
 

でも、別にそんな分かりやすいくらいに、蔑まなくてもいいのに。

今のは、さすがにひどすぎる。
 

「…日向君、嫌だったら少し私の後ろ歩けばいいよ」
 
「え?」
 

突然の向日葵の悲しそうなトーンに、驚いて声を出す。
 

「さっきの人、私の事見て、たぶん『盲目か』とか思って軽蔑してたでしょ?」
 

向日葵の何もかも分かってる言葉。俺はまたもや驚いて目を見開いた。
 

「え、分かるのか?どっちかっていうと、視線の方が鋭かったのに」
 
「嫌でも分かるよ。声のトーンからもそうだし、目が見えなくてもそういう視線は感じるの」
 

すると向日葵は、少し目を細めて、微笑んだ。
 

「そうするとさ、やっぱり隣にいる人も変な目で見られるし。だから、離れて歩いていいよ。ていうか、離れて歩いてください。ね?」


何でもない事のように言うが、白杖を握りしめる向日葵の細い手は、小刻みに小さく震えていた。