「来ないわけないよ。ずっと、楽しみにしてた」
『楽しみにしてた』ちょっと、恥ずかしいことを言ってしまったと後悔したが、向日葵は何でもない事のように、純粋に笑みを顔いっぱいに広げて、喜んでくれてる。
さっきの嫌な気持ちが嘘みたいに、心が晴れやかになる。
「じゃあ、行こう!」
向日葵が、白杖を突いて、道を歩き出した。
「どこに行くんだ?」
俺が問いかけると、向日葵はいたずらっ子のように舌を出して笑うと、人差し指を口につけた。
「えへへ、内緒。大丈夫だよ、すぐ着くから」
「なんだよ、それ。気になるなぁ」
二人で笑いあう。自分でも、幸せそうだなって思うくらいの笑い声が、町内に響き渡った。
俺は、視線を前に向けた。高級住宅街なのか、大きな家がたくさん並んでいる。
「あ、それでね…」
「あら、そうなの。山田さんのとこ…」
前方から、いかにも高級住宅街に住んでいると言っている、高価な服に身を包んだおばさんたちが来る。
「こんにちは!」
向日葵が、おばさんたちに元気に挨拶をした。
子供のように大きな声で、満面の笑みを浮かべてる。
ほんと、挨拶まで登校中の小学生みたいなんだな…。
ところが、二人のおばさんは、向日葵の挨拶を合図に、彼女の顔を見ると、途端に顔がひきつった。