「要するに、日向君のお母さんの圧力が、日向君を縛り付けてたわけでしょ?」
 
「いや、まあ、そういうことになるのかな…」
 

圧力。遠回しに、いつも母さんがどうとかと言っていたが、直に『圧力』というと、なんだか母さんに対して、申し訳なさと恐ろしさを感じる。
 

「あ、もう家着いちゃった」
 

向日葵がそんなことを言うので、前を見ると、そこにはあの息を飲むほどでかい家が立っている。
 

「じゃあ、また明日ね」
 

向日葵は、俺とは目を合わせず、笑顔で手を振る。
 

「ああ。明日、また来るよ」
 

そういうと、俺も手を思いっきり振った。当然、向日葵には見えていない。

その証拠に、俺がまだ手を振っているのに、向日葵は家へと入っていってしまった。
 

いつの間にか、空は綺麗な緋色に染まっていて、俺がみた青い空は、どこかに消え去っていた。