二人で肩を並べて帰る道。眩しいばかりの太陽が、澄んだ青空と千切れ雲を照らしていた。
「ね、日向君。空って、何色?」
突然、向日葵がそんなことを聞いてきた。
「…空は、青じゃないのか?」
戸惑いながら答える俺に、向日葵は顔を見えないはずの空に向けて、手を仰いだ。
「じゃあさ、雲はどんな色?どんな形?空とうまくマッチしている?」
大量の質問に、頭が混乱してしまう。
そんな俺の態度を悟ったのか、向日葵はくすっと笑った。
「ね?中々、当たり前に見てるものって、説明しにくいでしょ?」
そこで、向日葵の言いたいことがなんとなく分かり、俺ははっとした。
「そっか。向日葵は、見えないんだもんな…」
少し低いトーンで言ってしまったと後悔したが、それをもみ消すように向日葵は明るい声を出した。
「そうだよ。私には、今空がどんな様子なのかも、雲がどんな形なのかも分からないの」
そこで、向日葵は一旦言葉を途切ると、真剣な真っすぐな瞳をした顔になった。
時々向日葵がこんな顔になると、俺は向日葵からどんな言葉が出るのだろうと、少し好奇心が出てしまう。
「…日向君ってさ、結構幸せな方だと思うの。結局、大切なものは失ってはじめて気づくわけだし。だから、逃げないでね」