そこで俺は、はっとした。
 

別に、俺はそれでもよかったんじゃなかったのか?
 

操り人形だろうと、俺にはピアノっていう取り柄がある。

なら、それでいいって思っていたんじゃなかったのか?
 

俺は、向日葵を見つめた。透き通るような白い肌に、目を奪われる。
 

自分でも信じられない。たった四日しか一緒にいない向日葵に、俺は俺自身を変えさせられた。
 

まだ完璧じゃないことは分かってる。まだ、向日葵と一緒じゃないとダメだ。

でも、それでも、向日葵のようにポジティブに考えれば、俺が操り人形から、少しは本当の人間になったことに、変わりはないんじゃないか?
 


だとすれば、中学生の頃に、空っぽになってしまった心が、全部埋まるかもしれない。
 

「フフフ」
 

小さな笑い声に、俺は少し驚きながら向日葵を見た。
 

「よかった。少しは元気になったみたいだね」
 

足を丸めながら図星をさしてくる向日葵に、俺は「えっ」と、思わず驚きの声をあげた。
 

「よ、よく分かったな」
 
「えへへ。すごいでしょ?なんとなくそうじゃないかなって。でも、日向君の声も少し明るくなってるし、当たってるんだね」
 

「やったー」と、ガッツポーズをして無邪気に喜ぶ向日葵を見て、俺は声を出して笑いながら、ため息をついた。