心が、真っ白に染まった。
俺は、指を鍵盤から離すと、右手を左手で包み込んだ。
あれだけ当たり前だった、心が真っ白になる現象が、こんなにもいやに感じるなんて。
向日葵と一緒にピアノを弾いて、嬉しい、楽しいと感じるのが当たり前になってきていたから。
違うよ、日向。
俺は、成長なんかしていなかった。
俺は、向日葵と一緒だったから、あんなに軽やかな音が奏でられたんだ。
向日葵がいなかったら。
俺は、今までと何の変りもない、感情なしでピアノを弾く、悪魔の孤高ピアニストなんだ。
もう、俺は変われないのかもしれない。変わったら、感情を持ったら…。
生きてる価値がなくなるから。