君のおかげ
次の日の、昼食タイム。
「え!空川、悪魔みたいな演奏とか言われたの?」
伊藤、水田、黒西の三人で昼食をとっていると、話の流れで、ふと大川と伊藤に昨日の事を話した。
「ね?水田もひどいと思うでしょ?」
驚く水田に黒西が、同調を求める。
「そんなことを言うやつがいるなんて、どうかしてるぜ!よし、俺が一発ぶちかましてきてやるか!」
伊藤が立ち上がって、拳を叩く。
「いや、別にそんな大事じゃないし…」
俺がボソリと呟いた瞬間、伊藤が顔を俺に近づける。
「大事じゃないわけないだろ。お前の事を悪魔呼ばわりしてさ…」
「いいんだよ。俺が、変ればいいだけの話なんだから」
伊藤の言葉を遮って、俺は笑顔を伊藤に向けた。
「俺が、悪魔の演奏って言われないくらいに、素晴らしいピアノを奏でられればいいんだよ。遠い道のりだけど、ピアノが楽しいって思えるくらいのピアニストになれば、それでいいんだ」