「あ、あの、ユウリくん……」


もう、何を言えばいいのかわからなくて、ユウリくんの名前を口にすることしかできなかった。

すると突然、ハッとして瞬きをしたユウリくんは、次の瞬間パッ!と勢い良く手を離して立ち上がった。


「う、わ……っ! ご、ごめんっ。俺、今──」


顔が耳まで真っ赤だ。

その顔を手の甲で隠すようにしたユウリくんは、また一歩後ろに後退った。


「俺、今、ミオに……」


鼓動はバクバクと、今にも爆発しそうなほど高鳴ったまま。

重なり合っていた手にはシーグラスが乗っていて、彼の熱を残している。


「ほ、ほんとにごめん、俺……。ミオが泣いてるかもと思ったら、また身体が勝手に動いて、抱き締めてて……っ」


焦った様子のユウリくんは、口元に手の甲を当てたまま、視線を左右に彷徨わせた。

──私が泣いてるかと思ったから、抱き締めた。

……ああ、そうか。そうだよね。そういうこと。

ユウリくんは、とても優しい男の子だ。

だから今のも、私が泣いてるかと思ったから、慰めようとしてくれたんだ。

急に抱きしめられたから驚いたけど……。

今、あまりにも焦っているユウリくんを見たら、不思議と涙は引っ込んだ。