「え……あっ、私は、その……ちょっと用事があって……」

「そう、なんだ」

「ユ、ユウリくんは、なんでここに……?」

「ん? 俺は学校帰りに図書館に寄って、これから家に帰るところで……」


言いながら、ユウリくんは自転車に跨ったまま、私のそばにきた。

そういえば以前、ユウリくんは自宅のある最寄り駅までは自転車で来ているのだと言っていた。

だから今日は、家に帰る前に図書館に寄ったということだろう。


「そっか……。偶然、だね?」

「うん、ほんとに偶然でビックリした。もしかしてミオかなって思って声をかけたら、ほんとにミオで……。ハハッ。図書館寄って、ラッキーだった。まさか、こんなふうに会えると思わなかったし」


そう言うと、ユウリくんは花が開くようにふわりと笑った。

思わず胸の鼓動が小さく跳ねる。

……ユウリくんは、どうしていつも、こんなふうに私がドキドキすることを言うんだろう。

特別な意味はないとわかっているけれど、ユウリくんみたいなカッコイイ男の子に言われたら、免疫のない私は照れずにはいられない。


「この間のテストで、ちょっと気になるところがあって、それに関する本を借りてきたところなんだ」

「そうなんだ……。ユウリくんは、偉いね」

「いや、全然? ただ、うちの学校の図書室は、サボりスポットみたいになってるから、本を探すにも落ち着かなくてさ」

「そっか……。私は今、服を探しに来たんだけど、全然似合うのが見つからなかったから帰るところで……」


と、うっかり口を滑らせた私は慌てて言葉を止めた。

ユウリくんは、そんな私をとても不思議そうに見つめているけれど、もう全部、後の祭りだ。