俺様王子?!☆second☆





「よく、似合ってるじゃないか。その…“ウェディングドレス”」


精一杯の笑顔が、私にはとても嬉しかった。


「ヘヘッ…。
お父さんからそんなこと言われるなんて、なんか不思議な気分…。」


いつもと違うお父さんからいわれると、さらに。


「龍斗君よりも娘の花嫁姿見れるなんて、俺は運がいいな。」


運がいいか…そうかもね。


「じゃあ美姫、私は中で待ってるからね。」


「うん。ありがとう…香織!」


「何よ、改まっちゃって。」


クスクスッと笑ったあと、香織は私に手を振りながら会場が見えないように中へと入った。



「美姫、お前を龍斗君のところまで…送り届けるよ。」


「………ありがとう…。」


そして、会場が開かれた―――――――――――――――














それからのことはあえてここでは言わないでおくね。

だから、そのあとこのことは皆の想像に任せるよ。

でも、1つだけ言うなら…


“皆が涙を流し、皆に祝福され、世界で一番の幸福者に感じた”





誰もが憧れる結婚。
私も例外じゃなかった。

結婚と言うものには憧れを抱いていた。

でも実際…そんなの、成人してからだと思っていた。

今では30代での晩婚も珍しくないし、高校生の私にはまだ先の話…。

勝手に、そう思い込んでいた。

でも私は15歳にして、運命の人と出会った。

俺様で、ドSで、裏表激しくて…私の大っ嫌いなタイプの貴方に…いつの間にか惹かれていく自分がいる。

大好き…

理由なんて、ないの。

ただ、好きなの…

貴方のことが

どこが好き??

そう聞かれたら、何て答えたらいいのか分からない。
だって…思ってしまうんだ。

貴方を見た瞬間…


「好き…大好き…。」


普通なら“重い”と言われるような私を受け止めてくれた。


そして、そんな貴方は私に結婚を申し出てくれた。


幸せだ…

“結婚”そんなの、分からない。

今までそう思っていた。

でも実際、貴方との結婚式。
幸せに溢れた。




私達の新婚生活ははじまったばかりだし、まだまだ分からないこともいっぱいあるけど、これからも貴方と生きていきたいと思う。


アメリカへ私が一緒に行っても迷惑かけちゃうかもしれないね。

でもその分、貴方が不安になったとき、辛いとき、いつでも私がそばにいるよ。

お互い、迷惑掛け合って、支えあえる、そんな夫婦になれるといいね。

“夫婦”まだ慣れなくて、照れ臭いけど…二人で歩んでいこう。

これからの人生を、二人で。





結婚しても、この気持ちは変わらない…

私の愛しい…




      旦那様      













結婚式から数日が過ぎた。
今は寮から出て、龍斗の実家にお邪魔している。

今日はお父様に龍斗と呼び出しをされた。

龍斗と二人で長い廊下を歩く。
これが家だなんて信じられない。
どこかの会社なんじゃないかと思ってしまう。


「急だが、亜沙美の会社がアメリカの方で問題が起きたらしい。
しかし、私はこれから用事がある。丁度いいから、お前がアメリカへ行ってお前が対処しろ。」


あぁ、そうだ。
龍斗と私はいつかアメリカに行くんだ。
その日程がやっと決まりそうだ。


「3月30日、日本をたつ。準備しておけ。」


「あぁ。」


「龍斗、お前は下がれ。美姫と二人で話したいことがある。」


話??
龍斗は私の肩にポンっと触れて席をはずした。

二人になり、重たい空気が流れる。


「本当に、すまない。
君を巻き込んでしまって。」


第一声が謝罪だったのでかなり驚いたが、なんですか??と私は笑ってしまった。

「私は龍斗の奥さんですよ??……………って…奥さんらしいこと何もしてませんけど(笑)
だから、着いてくのは当たり前です。
それに、決めたのは私ですよ。謝らないでください。」





それより、問題は香織だ。
香織にはアメリカ行きを話していない。どうしようか。

………いえない。

香織にだけは…。

同じ大学に受かったときは二人で喜んだ。

この間だって、また一緒に通えるのが嬉しいって言ってくれた。
もちろん、私も同じ気持ちだ。

だからこそ、言えない。

私の大親友で、一番何でも言えて…辛いとき、必ずそばにいてくれた。

それなのに…私は香織を裏切って…アメリカに行く。

裏切ったつもりなんてない。今でも…香織は大好き。

でも、私は香織より龍斗をとったのも事実。

香織に…あんなに喜んでくれた香織になんて言えばいいのか、分からない…。


お父様の部屋を出て、戸惑いつつ、香織に電話した。


「もしもし、香織??」


「美姫??どうしたの~??」


「今、時間ある??話したいことがあるんだけど…。」


「いいけど…あ、じゃあ私美姫ん家行くよ!」


「あ、でも今私龍斗の実家に住んでるから…わかる??」


「あ~大丈夫!大体は知ってるし、その辺に着いたらまた電話する~。」


「本当??いきなりごめんね??」


「いいって!じゃあまた連絡する!」


「うん。ありがとう。」






心臓はバクバクだ。
この事を言ったら…香織はどんな顔するかな…。

悲しい顔…??
怒る顔…??

………喜んでる顔…??


香織…



少しして、電話が鳴った。


「もっしぃー!美姫??着いたよ~。今家の前!」


「嘘っ!わかった。今行くね。」



私は慌てて香りを迎えにいった。

着くと、香織は何時もより少しレースの多いチュニックに、短パン、真っ白な長いパーカーが少し上品さをだしている。

香織にしては珍しい服だ。


「わざわざごめん!中、入って!」


「ありがとう。」


中に入ればメイドがやって来て、必要なお茶の数を聞いてきた。

2つ、と私は指で2を作りながらお願いする。一礼をしてから、メイドはお茶を汲みに戻った。

私の自室に香織を案内してすぐ、メイドがお茶を部屋に置いていった。


「美姫、話って何??」


話を切り出したのは香織からだった。
私は戸惑いつつも、本当のことを話す。








「あのさ、香織…。
私、アメリカに行くんだ。」


私の突然の言葉。
でも、香織はそこまで驚いていなかった。


「へぇ。新婚旅行はアメリカかぁ~。」


新婚旅行…??
そっか。香織は新婚旅行と勘違いしてるんだ。

さすがの私でも、新婚旅行はアメリカじゃなくて、ヨーロッパに行きたいな。

出来ればイタリア。

でも、今回は違うんだよ…香織…。


「違うの…。」


「違うって何が??」


「…………………新婚旅行じゃない。」


一瞬、香織の顔が曇った。
私は苦しくなる前に自分から話す。


「龍斗がね、経済の勉強でアメリカに留学するの。
私、ついてきてほしいって言われた。
それで……………。」


「もしかして、本当についてくの…??」


私は顔があげられなくて、下を向いたまま頷いた。
香織は今、どんな顔をしてるの…??
気になるけど、怖くて見えない。


「……じゃあ、大学は??」


「……………いけない。」






「香織が、わざわざ私のために頑張って勉強してくれたり、私たちが継ぐ会社に勤めようと努力してくれてるのは知ってる。
でも…私…龍斗を支えたいの…。
夫婦になってもやっぱり不安なの。
龍斗は日本人にしては背が高いし、かっこいいし、きっと向こうでもモテるでしょ??
こっちの大学で勉強したいことは山ほどある。
こっちでしか学べないことだってたくさんあるし…。
それでも、やっぱり龍斗と居たいの…。
ごめん…香織。」


私は思ってることを全て伝えた。全部自分勝手だ。
香織は何も悪くないのに…。私は…香織を傷つけてる…。


「私…美姫が思ってるほどいい子じゃないよ…。」


え…。思いがけない言葉に私は下を向いていた顔はバッと上を向き、香織の顔を見た。


「……っ……」


香織の表情は怒ってるわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく、優しい。







「美姫はさ、私が美姫のために同じ大学に行ったみたいに思ってるかもしれないけど…それは違う。
私がいなくても、龍斗がいたし美姫が平気なのは知ってた。
でも…私が美姫といたかったから、勝手に同じところに受けたの。
だからね、美姫が謝ることなんて一つもない。」


「でもっ!」


「美姫…本当に私のこと思ってくれるなら、会社をもっと大きくして、私を雇ってよねっ!」


ニッと笑った香織は「それに…」と続けた。


「離れてても空は繋がってるでしょ!」


その瞬間、私の目からは涙が流れた。


「ありがとう…。」


「アメリカ行ってもメールしてね??」


「うん!」


「3ヶ月に1回は帰ってくること!」


「はいっ!」


「ちゃんと一日三食食べるんだからね??」


「はいっ!………って…香織、お母さんみたい。」


「やっぱり??」


「「………プッ……」」


私達は二人でずっと笑っていた。

よかった…香織はやっぱり凄い。
私だったら絶対に同じこと思えない…。
やっぱり香織は私の憧れの友達…。
こんな友達を持てて、私は幸せ者だ…。