エピローグ




 「まったく、雪香さんの娘は本当に雪香さんにそっくりですよ。おてんばな所が!」
 「もう、また言ってるー!レイト、お母さんも同じ話ばっかりで飽きちゃってるよ。」
 「性格が似てるのは、俺も否定しないけどな。」
 「もう!シュリまで!……早くお祈りするよ。」


 今日は、水音の母親である雪香の命日だった。
 ここ数年、この日には3人が集まってお参りをすることになっていた。

 雪香のお墓は、湖のすぐ近くにあった。
 少し大きめな丸い石が置いてあるだけのものだったけれど、ここには毎日花が咲いている。不思議な場所だった。
 買ってきた花束を、石に立てかけるように置き、3人で手を合わせて冥福をお祈りした。


 「よし。お母さんにも会えたし、昼食作らないと。レイトも食べていかない?」
 「僕は村の会議があるので、もう行かないといけないので。また、今度!」
 「おまえも、忙しいな。彼女も出来ないだろ。」
 「僕は、水音が欲しいんだけどね。水音はそろそろ俺を選んでくれるよね?

 「なっ!」
  

 レイトの言葉に思わず頬を染めてしまう。金髪の王子様のような彼にそう言われてしまうと、さすがに水音でも照れてしまう。
 そんな水音を、シュリは腕を掴んで強く引っ張り抱き寄せる。すっぽりと彼の片手で抱き締められてしまい、更に水音の顔は赤くなった。


 「おまえになんか渡さないっ!」
 「選ぶのは水音だから。……ま、今は選ばれているのはシュリだからって気を抜かないようにね。」
 「うるせーな!早くいけ!」
 「それと、ラブラブしすぎないでよ!」


 そんなことをシュリにいうと、すぐにレイトは町の方へと駆けていってしまった。


 「本当に油断も隙もないやつだな……。」


 ぶつぶつと、言いながらシュリは水音の手を引いて歩き出した。もちろん、ふたりの家に向かって。