「黒なのに自由なシュリが羨ましかった。そんな彼には、水音も惹かれるのがよくわかったけど、けど、水音がいなくなると、今まで以上にさみしかったんだ………。」
 「だから、一緒に青草になって暮らしましょう。きっと、今より大変な暮らしだけど、3人だと楽しいと思わない?」
 「…………おまえたちは、それでいいのか?僕はふたりを傷つけたのに。」
 

 レイトが二人を恐る恐る見つめると、シュリと水音は顔を合わせたあと、ゆっくりと頷いて笑った。



 「レイトはシュリの親友なんでしょ?………私も仲間に入れて欲しいわ。」
 「俺だってお前を裏切ったんだ。お互い様だろ。」



 二人の予想もしない言葉を聞いて、レイトは吹き出すように笑った。涙をボロボロと流しながら。


 
 「君たちは変わっているね。本当にお似合いだよ。」


 涙を手で吹きながら笑うレイトには、もう怖い部分など1つもなかった。







 「………レイトも認めてくれたし。シュリ、私を湖に運んでちょうだい。」
 「おまえ、その傷でここに入るつもりか!?」
 「刻印を変えるには、そうしなきゃいけないんでしょ?早く終わらせるから。シュリのも……お願い。」


 痛みと戦いながら、必死にシュリにお願いをすると、シュリはため息をついて、「わかった。」と、苦笑した。
 シュリは、水音を抱き抱えながら湖の中へと入っていく。
 レイトは水辺でじっとその様子を見守っていた。


 二人が湖に入ると、そこから淡い光が輝き始めた。


 シュリと水音は、手をとって目を瞑った。
 そして、心の中で同じ願いを想った。


 『この世界の人々に青草の刻印を。』


 その願いが重なったとき、優しい光が湖から飛び出していき、この世界に住む一人一人体を温かく包み込んだ。

 そして、その光が消えると、人々の体には青草の刻印がキラキラと光輝いていた。


 
 「あ…………俺の黒の刻印がなくなって、白蓮の代わりに青草に変わってる。水音の刻印も………って、おい、水音っ!」


 レイトの抱き抱えながら、水音は意識を失っていた。
 血を流しすぎたのか、血からを使いすぎたのかはわからない。

 けれども、大好きな人の腕の中で、水音は微笑みながら目を閉じていたのだった。