春日くんとその子が出会ったのは幼稚園のとき。

二人は幼なじみだった。

春日くんはその子のことが好きで、両想いになれたときは信じられないほど幸せだったらしい。

でもその子はお金持ちのお嬢様で、フィアンセがいるらしい。

「今どき政略結婚ってやつ?」

春日くんはうなずいた。

「真緒は俺じゃなくてそいつを選んだ。それが現実なんだ。」

春日くんはとても悲しい顔をした。

昨日泣いていたように、泣きそうな顔をした。

「そんなに好きなんだ…。」

「…それより、市村さんにはいないの?そんな人。」

私はもちろんうなずいた。

「そんなに自分以外の人のこと大切だなんて思ったことないな。」

すると、春日くんは笑う。

「大袈裟だなぁ。」

「ほんとだよ。父さんも母さんも、いてもいなくても一緒だし、弟もそうだもん。そんな人間が恋なんて出来るわけないもん。」