唖然と、二人が向かい合って座っているのを見ているとー…


「終わったらすぐ帰るぞ」

流星がコーヒーを飲みながら、そう言った。


…終わったら…すぐ帰るぞ…??


唖然としている上に、口がポカーンと開いたままになってしまう。



この人は、何を言っているんだろうか?



「七海ちゃん、田中さんが体調不良で今日休むことになったから。忙しくなるかもしれないけど、よろしくね」

引き継ぎをしているはずなのに、田嶋さんの言葉の語尾に、ハートマークが付いているように聞こえる。

「…はい」


ずり落ちた鞄のヒモを直す気も起こらず、小さな声で返事をした。


「じゃあさ、流星くんは…」

私が返事をしてすぐ田嶋さんは、再び流星に向かって話し始めた。
声のトーンと田嶋さんの表情で、二人の会話にはハートマークが飛び交っているのが見える。



「…何だか…わからない…」


ボソッと言った言葉は、二人には聞こえていない。



「…はぁ」


そんな光景を見て溜め息をつくと、バイト用の制服に着替えるため更衣室へと向かった。