「遅い!」
「…」
“俺が惚れたって言ってんだから、自分を卑下するな。七海は充分、魅力的な女だ”
流星さんから告白とも取れる発言をされたあの朝から、流星さんは本当にバイト帰りは迎えに来るようになった。
「未成年をこんな遅くまで働かせるなっつーの」
「いや、まだ21時だし…」
ブツブツ言いながらも、社員通用口のすぐ側にタクシーを停め、私が出てくるのを外で待っている。
最初の頃は店内のイートインコーナーで待っていたが、あまりにも女性客や店員に注目されてしまうため、今では私の退勤時間に合わせて外で待っている。
「ほら、早くタクシー乗れ。今日はすぐ仕事行かないといけないから」
「…それなら迎え来なくてもいいですけど…」
「あ?何か言ったか?」
「…いえ」
ほぼ無理やりタクシーに押し込まれ、家に向かう。
これにも、だんだん慣れてきた。
バイトして3000円稼いで、タクシーで2000円かけて帰る。
「なんの意味もない…」
ついつい、頭の中でお金の計算をしてしまうのも、いつものこと。
「何が?」
「…何でもないです」
「変なやつ」
…流星さんに言われたくない。