気のせいか…。と私は奈津が見ているチャットの演奏を画面越しに見ながらも、目は演奏を終えるまでずっとギターを弾くハルを追っていた。
奈津が以前に見せてくれた写真でしか知らないし、会ったこともない花瀬先輩の顔を思い出しながら見ていると、気のせいなんだろうと思いながらも似ている感を消し去れないでいた。
「ねぇ奈津、ハルって兄弟とかいるの?」
「それがさ、プライベートな事は謎なの。事務所も一切公表してないし、雑誌のインタビューでも家族や友人関係なんかの話は一切ないんだよー」
「そうなんだ」
「まぁそのミステリアスな感じが女子にはたまらないんだけどね~」
まぁ別にミステリアスなバンドとか歌手って以外といたりするらしいから珍しくもないか。
現に私が好きなコウだって謎だらけなわけだし…
「あ!そうだ!すっかり忘れてた!」
「ん?」
見送りをしようと玄関まで奈津と一緒に部屋を出て奈津が靴を履いていると、いきなり思い出して鞄から封筒を出すと、私に「はい」と手渡したので中を出して見ると……
「チケット?」
「そう!チャットのライブチケット!2枚取れたから羽流と行こうと思ってさ」
「え、ちょっ、そんな無理だって…」
「じゃーねー」
そう言い残して奈津はドアを閉めて帰っていった。