「あれかな?当日ショップで手にするまでのお楽しみ!みたいな感じかな?」

「収録曲言わずに聴くまでお楽しみ!ならまだしもさ、アルバムのタイトルとかジャケットは隠す必要なくない?」

「う~ん」

奈津の意見が100%間違っているとも正しいとも言えないけれど、それもそうだなと思ってしまった私の頭はその疑問でいっぱいになっていた。

私の頭をそんな風にした本人は言うだけ言ってテーブルの上に置かれた母特製のクッキーを食べながら私のテレビのリモコンを片手にチャンネルをぐるぐる変えまくっていた。


「あ、羽流羽流!見て!チャット出てる!」

「ああ、奈津好きなんだっけ?」

「うん!けどさ、チャットって全然テレビとか出ないんだよねー。これかなりレアだから羽流も焼き付けとけ」


奈津は3年前ぐらいだったかにデビューしたChAt(チャット)というバンドのファンになり、今ではすっかりどっぷりボーカルの歌声の虜になっているらしい。


「あ~マジかっこいいわ~ナツ」


そのボーカルの名前がNatsu(ナツ)というらしく、奈津は自分の名前と同じ事にデビュー当時から運命を感じたらしく、当時から「私の旦那様」などとちょっと危ない発言の数々を口にしていた。