帰ってもただいまと言える人がいない寂しさとか。
どこに出掛けても側に親しい人がいない悲しさとか。
そういうものが彼女の瞼を震わせていたのかもしれないなぁと優夜はぼんやりと考えていた。
彼女に惚れたのはいつからか。それを思い出すために記憶を遡って物思いにふけっていたのだが、今思うとどう考えてもあの時に一目惚れしていたじゃねえか、という結論に至った。
いやだって、思わないじゃないか。まさか一目惚れだなんて。あまりにも綺麗な子だったからどきっとしただけだと思っていたのだ。

『一目惚れ、だったかも』じゃねえよ俺。一目惚れだったわ。

数時間前の自分の思考を呪いこそすれ、優夜は随分と気持ちが落ち着いた。ましろが好き。ましろが、好き。そう何度も心で呟いて、噛みしめる。

自室のベッドでごろりと寝返りをうつ。明日、どんな顔をして君に会いに行こう。





優夜は浮かれていた。何せ人生初めての恋、つまり初恋だった。