当たり障りのない、ここに住む人にとっては普通かもしれない話だった。優夜にとってそれはすごく新鮮なことだっただけで。
それでも、村のことを何かひとつ褒める度に、少女は嬉しそうな顔をしていたように思う。
分かりづらいなぁ、とは思った。でも、感情が全然ないわけではない。少し、不器用なだけなのかもしれない。優夜はそう考えていた。

「…送ってくれてありがとう」

「こっちこそ楽しかったし、ありがとな!」

辿り着いた少女の家に灯りはついて居らず、車なども見あたらなかった。
この村は隣の家までが500メートル、遠いと1キロメートルも離れていたりする…いや、これは隣と言えるだろうかというのが優夜の本音だが。商店までだってここから3キロはある。
また、その商店から役場までだって5キロほどあるのだ。それに、大きな買い物や家電はそれから更に10キロ以上走らねばならない為車が一台はある家がほとんどだというのに、ここにはその車や、ましてや自転車の類いも一切なかった。
その時は、まだ出掛けているか働きに出てて帰ってきていないからだと、そう思っていた。