そのとき。


目の前を赤い色が通りすぎ、そしてそれを優しく拾い上げた。

少しキョロキョロした赤髪の彼は、ふとこちらを見た。

その一連の流れを見ていたわたしはふいにその赤髪の彼と目が合ってしまったので少し焦った。


「あっ…」
ー 目、合っちゃった… ー


真正面から赤髪の彼をみた。
身長がとても高い。スタイルが良くて恐ろしく足が長い。羨ましいくらい顔が小さい。
遠くから見ると赤髪の彼は際立っていた。
もっと赤髪の彼を見たくなった。
目を凝らしてなんとか顔を見た。
派手な髪色とは似合わない、優しくてやわらかい表情だった。エキゾチックな整った顔立ちで、周りとはどこか違うような、不思議な雰囲気の美青年だった。


赤髪の彼は2.3回細かく瞬きをすると、手に持った桜色のそれを指さしながら、首をコテンとかしげた。

まるでぶりっ子がやるような仕草…。
わたしの大嫌いなあざとい仕草なのに、嫌悪感はなくて、むしろさらに赤髪の彼の不思議な雰囲気を強めた。


赤髪の彼は首をかしげたまま口パクでこちらに訴えかける。

わたしは “知らない” と同じように口パクで返した。
おそらく彼は、一部始終見ていたわたしに、誰の?と尋ねたんだとわたしはそう解釈したからだ。

赤髪の彼は困ったようにまゆ毛を下げて苦笑いし、こちらに小さく会釈してから人混みの中に消えていった。