22時ぴったりにバイトを上がり、外に出ると黒い車が止まっていた。
そのすぐ側には、携帯を触りながら煙草を吸う大志の姿があった。

「大志くん、ごめんね!お疲れ様!」
声を掛けるとこちらを見て微笑んだ。
「お疲れ!こっちこそごめんな。これ、紬のだよな?」
昨日2人で話している中で、
iPodの中身の話をしていたのでそこで紛れてしまったらしい。
「そうそう!わざわざありがとう」
「紬、飯食った?俺食いそびれてさ」
「食べてない!どこか食べにいく?」
iPod渡してもらうだけじゃ味気ないな、と思っていたところだった。
2人で近くのファミレスに行き、遅めの夕食をとることに。

昨日の話の続きをしていると、一通のラインが。
『つむ、ごめん!明日どうしてもバイトの人足りないらしくて、入ることになっちゃった…。明日の映画、日にち変えてもらえないかな?』
明日映画に行く約束をしていた高校のクラスメイト、長野由佳だった。

「うわ、まじか」
公開前からずっと楽しみにしていた映画だったのでつい心の声が出てしまった。
「どしたの?」
大志が不思議そうに聞いてきた。
「明日友達と映画行く予定やったんやけど、バイト入っちゃったらしい」
「まじ?残念だな。あ、てことは明日暇なの?」
「暇になっちゃったね」
「俺も明日暇なんだけど、どっか行く?」
思いがけない由佳からのドタキャンと大志からのお誘い。
「行く行く!行きたい」
わたしは少し食い気味に答えた。

「いいね、つか1回帰ってまた明日合流すんのもだるいし、
今日このままどっか行っちまうか?陽佑ん家あたりで飲むのも有りだよな」
陽佑はわたしの家と大志の家のちょうど間あたりで一人暮らしをしている。
正直陽佑の家に行くのはちょっと気が引けたけど、大志と居られるのなら…なんて思っちゃったりして。
芽生えた恋心のままに、大志の案に乗り、
着替えを取りに家に寄ってもらったあと、陽佑の家に向かった。