「お邪魔しまーす!」

1週間後、大阪旅行前日。
陽佑の家にみんなで泊まりにきた。
食事とお風呂を済ませ、後は寝るだけの状態。

「せっかくだからみんな晩酌付き合えよ!」
お酒の言い出しっぺは大志だ。
「大志、明日運転なんだからほどほどにしろよ?」
昇は医学部に通っているせいもあってか、しっかりしていてみんなのリーダー的存在。賢さが滲み出ている。

軽く数杯飲むことになり、乾杯をする。
小さな机を6人で囲む。わたしの隣には、大志がいた。

「俺、紬ちゃんとちゃんと喋るの初めてかも」
昇が口を開いた。
「あたしも!女子高生いいなあ、若くてピチピチじゃん」
美鈴もそれに続く。
「俺一番おっさんじゃん!」
大志の一言でみんなが笑った。
優しい友達がいて、隣には好きな人がいて、幸せな時間。

「うわ、もう日付超えてるよ。そろそろ寝ないと!明日6時出発でしょ?」
紗枝の一言で就寝の準備が始まった。
大志が実家から持ち込んだ布団と、陽佑が用意してくれた客用布団と、陽介のベッド。1つの布団に2人ずつ寝ることになった。
大志は自分の布団で寝るので、ベッドに陽佑と昇が寝ることになった。
客用布団に2人と、誰かが、大志の隣で寝ることになる。

「え、どうする?あたしか紗枝か紬ちゃんが大志と寝ることになるけど。あたし別に大丈夫だけど、2人どう?」
美鈴のその時の表情をわたしは見逃さなかった。
美鈴ってもしかして…。
「紬、おいで」
ぐいっと腕を引っ張られて、気付けば大志の腕の中にいた。
みんなが見てる中での大志の大胆な行動に胸が高鳴った。
「あー紬まじでいい匂いする…最高の抱き枕だわ」
ほどほどにしようと言ったのにかなり飲んだ大志はうっとりとした表情で言った。

「ちょっと、大志。紬ちゃん、枕じゃないんだから、襲っちゃダメよ?」
紗枝が笑いながらフォローを入れる。
「あ!大志!俺も紬ちゃんと寝たいんだけど!」
ベッドの上から陽佑の声もした。
「まあ、大志からしたら紬ちゃんって妹みたいな感じっしょ?大丈夫じゃない?陽佑はみんながいても間違いなく襲うと思うけどな」
昇の声も聞こえる。
妹、か。
「寝るとこ決まったし、電気消そうぜ」
昇の声を最後にみんな寝静まった。
大志の腕に抱かれて、吐息から漏れるかすかなお酒の匂いを嗅ぎながら、わたしもいつの間にか眠っていた。