「紬、好きだよ」
わたしが素直な心でいられるのは、お酒に飲まれたこの時間だけ。

今日も40度のウイスキーボトルを2人で空にした。
「しても、いい?」
飲み干したグラスを置いた手が、わたしの胸へ伸びる。
その左手の薬指には、真新しい指輪が光っていた。

こんなこと、いけない。

普段、頭では分かっている、分かりきっていること。
でも、どうしても抑えられない。
お互い、訳が分からなくなるまでお酒を飲み続け、記憶があやふやになるくらいまで飲んだら、身体を重ねる。
本能のまま快楽を感じ、愛の言葉を囁く。

重ねた身体を寄せ合って深い眠りにつき
朝が来て目が覚めれば、またいつも通り友達としての2人に戻る。

誰も知らない、知られてはいけない、2人だけの秘密。
純粋に好きなだけなのに、どうして一緒にいられないのだろう。セックスはするのに、どうして友達なんだろう。
お酒に飲まれないと、罪悪感で押し潰されてしまうから、いつも記憶にはない。
でも、一度温もりを知った身体は、何度もそれを求めてしまう。

さあ、今日も周りを、自分を、騙して生きていくのだ。