クラスの派手系グループのメンバーの中で一番いいポジションに位置してるねとクラスの女子に言われたことがあるけど、それは褒め言葉としてとらえられない。


私のポジションがいい位置でも、ヒロエと紀子から雑に扱われることに変わりはない。


どうすれば私は心の底から満足して過ごすことができるだろう。


階段を上りきり教室がある廊下を歩いていると、うしろから突然声をかけられた。


「おーい、梨沙!」


一瞬だけ体を震わせたが、あとずさりすることなく声のしたほうに目を向けた。


そこにいたのはクラスメイトの猪狩 千尋(いかり ちひろ)だった。


私の友人のひとりで、直美に比べて優しくておだやかな性格。


派手系グループのメンバーではないものの、クラスの学級委員を務めており、クラスメイトからの信頼が厚い。


誰に対しても笑顔を絶やさないし、ヒロエと紀子のように私を雑に扱ったりしない。


仲のいい直美たち3人よりも信頼できる存在。


体を千尋に向けて問いかける。


「なに? どうしたの?」


「今日、一緒に帰らない?」