「すみません、久保さん。いきなり隣街に行こうと誘って……」


「いや、気にしなくていいよ。俺もちょうどひまだったから嬉しいよ」


なにが嬉しいんだろう。


ただ隣街に行こうと誘っただけなのに、なぜ嬉しいと思う必要があるのか。


首をかしげていると、階段を上り終わってこちらに歩み寄ってくる人物を見つけた。


雨宮くんだ……!


そう思う気持ちを全力でおさえて、雨宮くんに視線を向ける。


雨宮くんもすぐにこちらを見たので、私の存在に気づいたのだろう。


だが、私の隣に座っている久保さんの姿を見つけるなり、急に不機嫌な表情を見せた。