無意識にそう考えてしまう。


拳を作って皮膚に爪が食い込むのを感じた、ちょうどそのとき。


心の中で自分を責める私から一瞬だけ目をそらし、久保さんが大きな箱から中身を取りだした。


「まぁ、素晴らしい絵ね」


箱の中身をすぐに見たらしいお母さんの声が聞こえた。


……『素晴らしい絵』?


お母さんの声が聞こえたほうに視線を移すと、そこにあったのは一枚の絵だった。


いかにも豪華そうな額縁で飾られた大きな絵。


しかし、その絵を見た瞬間、驚きの声をあげそうになった。


豪華な額縁の中に入っている絵が、あまりにも不気味だったから。


お世辞にもきれいとは言えない風景画という印象を受ける。


明るい色の絵の具がいっさい使われていない、暗い雰囲気をまとっている。


灰色や紺色が多く使われていることが、見ただけでわかる。


「お母さん、この絵のどこが素晴らしいの? はっきり言ってきれいとは思えないんだけど」


暗い色が目立つ絵をいいと思うなんて、お母さんはどうかしてるよ。