自分が親友だけに見せた笑顔が、他の誰かに見られていたとは思ってなかった。


そして、雨宮くんをひきつけたものであったことも。


「柏木のことが好き。だからほっとけない」


「雨宮くん……」


「あっ、返事はすぐ返さなくてもいいよ。返事できるときでいいから」


私のことをずっと好きだった。


それを聞いただけでまた嬉しくなった。


好きだと言われて嬉しく思ったということは、私も雨宮くんが好きだということだろう。


恋のことなんてずっとわからなかったのに、好きという気持ちにたどり着いたのはなぜだろう。


でも、そんなことは考えなくてもいいか。


とにかく、自分の気持ちを伝えよう。


両肩から手が離れたタイミングで、雨宮くんの制服の裾を軽く引っ張った。


「雨宮くん、私をずっと好きでいてくれてありがとう。嬉しいよ」


「柏木、それってつまり……」


「私も雨宮くんが好き。たとえ私の周りを囲う人たちが敵になっても、雨宮くんが……」


「バーカ、それは俺のセリフだっつーの」


私の言葉で雨宮くんは笑顔になり、私もつられて笑顔になる。


親友という存在は失った。


だけど、心の底から大好きだと思える大切な人ができた。


そんな心強い存在が、私を元気づけてくれる。


「じゃあ、帰ろう」


「うん」


笑顔を浮かべたまま手を伸ばす雨宮くんに、私はその手を重ねて満面の笑みを見せた。