小首をかしげた直後、雨宮くんがバッと顔を勢いよくあげて叫んだ。


「俺は柏木に嫌味を言うためにここに来たんじゃない! ただ俺は、柏木を助けたいんだよ!」


頬に落ちそうになった涙がピタリと止まり、視界がクリアになった。


雨宮くんは私に嫌味を言いたかったのではない。


直美の次のターゲットになってしまった私を救うために、ここに来た。


その事実に心臓がドクンッと大きく跳ねた。


私の味方がいなくなったと思ってたから嬉しい。


心に抱いている気持ちを雨宮くんに言おうと口を開けたが、言葉が出る前に雨宮くんの言葉が降ってきた。


「……それに昨日の言葉の返事をしようと思ったから」


「昨日の言葉……?」


「あぁ。柏木、昨日の昼休みに『ただのクラスメイトとしか思ってないんじゃないの』って言ったじゃん。その返事を返すチャンスがなかったから今返す」


雨宮くんが『昨日の昼休み』と言った瞬間、はっと目を見開いた。


そうだ、私はたしかに言っていた。