心の中でぶつぶつとつぶやきながらははっと小さく笑っていると、手首を握る力が強くなった。


力を強くしているのはまぎれもなく雨宮くんだ。


なぜ手首を握る力を強くしたのかが気になって、雨宮くんの顔を覗いた。


私が見える角度からは雨宮くんの横顔しか見えないが、悔しげに歯を食いしばっている様子は見えた。


「…………っ」


目をこちらに向けようとせず、なにか言いたげな感じだ。


いったいなにを言いたいんだろう。


それとも、言いたいことはなにもなくて、ただ私に嫌味を言うためだけにここに来ただけ?


嫌味を言うためなら、早く手を離してほしい。


「雨宮くん、手離して。私が直美の次のターゲットになったことは変えようのない事実だから。嫌味を言いたいなら手を離してから言ってよ」


「……ない」


冷たく突き放す私の言葉に対して返ってきたのは、雨宮くんの消え入りそうな声。


語尾だけしか聞き取れなくて、なにを言いたいかがわからない。


「えっ?」


頭上にクエスチョンマークを浮かべ、小首をかしげた。