そんなことはどうでもいいか。


小さく息を吐いて体勢を戻し、お母さんに視線を向けた。


「この人が私が小学生のときに近所に住んでた久保さんなのはわかったけど、なんで久保さんがうちに来てるの?」


この質問は久保さん本人に問いかけるべきだったかな。


言ったあとすぐに心の中で後悔した。


だが、後悔する私を気にする様子を見せることなくお母さんがニコッとした笑顔で答えてくれた。


「それは、恭平くんがうちの近所にひとりで引っ越してきたからよ。恭平くんがわざわざうちに来てくれて、お土産を用意してくれたのよ」


「お土産?」


久保さん、どこかに旅行していたのだろうか。


お土産を用意してくれたという言葉があれば、どこか遠い場所に行ったことは間違いない。


ていうか、久保さんがお土産を持ってきてくれたこと、今はじめて知ったんですけど。


お母さんはたまに突然すぎる言動をするから、状況を把握するのに時間がかかるんだよね。


「えぇ。恭平くん、先週まで海外に行ってたの。帰国したあと、空港の近くにあるお店でお土産を買ってきてくれたのよ」