私に顔を見せようとせず、ぷるぷると唇と体を小刻みに震わせた。


今私が一番知りたいことはなぜ直美に対抗したのかということだが、そのことに触れたくないのかまったく話そうとしない千尋。


知りたいけど、千尋がどうしても言いたくないなら……。


「千尋、無理して言わなくていいよ。ちょっと気になっただけだから。べつに教えなくても……」


「……ったから……」


最後まで言葉を吐きだす前に、千尋が小さい声でぶつぶつとつぶやいた。


頭上に疑問符を浮かべて千尋に少し顔を近づけると、千尋が顔をあげて最初から説明しはじめた。


「大坪さんに自分勝手なことを言うなって言ったのは、あの絵を見たから。悪い印象を受けた者に災いをもたらすという『水月夜』を……」


「…………」


「今朝、早くに目が覚めたんだけど、ふと絵に目を向けたら恐ろしい絵になったの。教室らしき場所で梨沙に似た女の子が大坪さんに似た女の子に殴られて血だらけになる絵に……」


私が直美に殴られて血だらけになる絵?