心の中でそうつぶやき、職員室から持ってきた鍵を使って施錠を解いた。


ドアノブをまわした瞬間、中にいた人物が私に抱きついてきた。


その人物はまぎれもなく千尋だ。


「梨沙、梨沙ぁ……!」


誰も来ない更衣室に私が現れたことに安心したのか、涙混じりの顔を見せる千尋。


そんな千尋の背中を優しく撫でた。


よかった、千尋が無事でいてくれて。


しばらく背中をさすって千尋を落ち着かせたあと、体を離してその場に座らせた。


「千尋、なんで朝のホームルーム前に直美にあんなこと言ったの?」


「あんなことって?」


「ほら、ヒロエと紀子がいないからって私に自分勝手な言葉を言うなって」


普段の千尋なら見て見ぬフリをしていたり、直美に対抗するクラスメイトを止めたりしていた。


なのに今朝、千尋は体を震わせながらも直美に対抗するような言葉を浴びせた。


なにか理由があるに違いない。


理由があるはずだと思ったとき、千尋が黙ってうつむいてしまった。