ふたりの姿が視界に映ったと同時に、ピクッと眉を動かした。


まさか……。


「お母さん。その人、お母さんの浮気相手?」


ドアを開けたときに目を見開いていたお母さんが両手を顔の前で振って焦った表情を見せる。


「ち、違うの、梨沙! これはね、浮気じゃないの」


「じゃあ、お母さんの隣にいる人は誰?」


目を細めてお母さんを見つめる私に、お母さんはさらに慌てる。


「あの、この人は……って梨沙、そんな怖い目で見ないで!」


どうやらお母さんの隣にいる男性はお母さんの浮気相手ではないようだ。


よかった。


もし本当に浮気相手だったらどうなっていたか。


安堵の息を吐いて表情を戻す私を見て、胸を撫でおろすお母さん。


私の鋭い視線から解放されて安心したのか、お母さんが私のほうにやってきて、私の肩に手を置いた。


「梨沙、知らない? 梨沙が小学生のときに近所に住んでいた久保(くぼ)さんのひとり息子の恭平(きょうへい)くんよ」


久保さん……。


お母さんの口から出てきた名前を聞いて、ポンッと手を叩いた。