「本日はおめでとうございます。お招きありがとうございます」
翼は、受け付けで、紳士的に頭を深く下げる。
それを見て、私も同じく頭を深く下げる。


とにかく黙ってついてるしかない!
何とか乗り越えよう!


会場に入ると100名はいるだろうか?すごい数の人で、私は本当にくっついていないと迷子になると確信した。

人に酔うってこういうのを言うんだろうか?

「ねぇー離れないでよ」
私はひっそりと翼に耳打ちをする。


「何言われても笑ってろ」
翼は、やや冷たい表情で言う。






「国木田君、これはこれは今日はお越しくださりありがとうございます」
主催者会社の社長らしき人が、大勢の人をかき分けてやって来た。


「いえ、こちらこそ、本日はおめでとうございます。ご招待ありがとうございます。こんな豪華なパーティーに招待して頂き感無量です」


見事なきらびやかなスーツに身をまとった社長は、会場のどこにいても目をひく存在。


そんな社長から、翼のとこに挨拶に来るとは……翼はやはりすごい人なんだと実感した。


「国木田君、お隣の可愛いお嬢様は?」


げっ!
私に触れないで。
私は観葉植物だから。


「はい、彼女は、僕の婚約者で、皆川奏音と言います」


へ?
今なんて?
はぁ?
違う、違いますよ…
違います!


「ほぉーそれはそれはめでたい。皆川さん、国木田君とは、長い付き合いになりそうだ。よろしく頼むよ」


「…」


私が固まっていると、翼は私の背中に手を回し頭を深く下げろと言わんばかりに、背骨を強く押した。



私は言われるがままに、無理やり笑顔を作り、頭を深く下げた。


えぇー?
これでいい?
満足?



もう限界……


会場は、豪勢なシャンデリア、一面金箔の舞台、カメラのフラッシュも相まって、目がチカチカし、私は少しフラフラになっていた。



「ちょっとロビーに出ていい?気分が悪くなっちゃった…」
私は翼にひっそりと囁くと、翼は、心配そうに「わかった」と言ってくれた。


「すみません、お水1杯下さい」