その週はずっと冷たい雨が降っていて、
なんだかテンションが上がらない。
それはみんなも同じみたいだ。
隣で川崎さんがため息をついた。
「ゆずちゃん。
こんなじめじめする時に、
大宮課長が視界に入って、
余計にじめじめするんだけど」
川崎さんは、さっき大宮課長から
面倒な作業を丸投げされて機嫌が悪い。
「川崎。お前明日から来なくていいぞ」
向かい側から大宮課長が応戦してきた。
「なんだ聞こえてたのか」
川崎さんがわざとらしく言った。
私は課長の方をチラリと見た。
「っ!」
バッチリ目があってしまい慌ててそらす。
この前のキス以来、
大宮課長を直視できない。
それどころか仕事の話をするのも
やっとのことだった。
「南くん」
うつむいていると後ろから山田部長の声がした。