「着いたよ」
「ここだ……!ありがとう成宮くん!」
そのまま5分くらい2人で歩いていると、チラシに書かれているままの店名がデカデカと記された店に到着した。
メイクをしていない身で入っても大丈夫なのかと少し躊躇いを感じたけど、成宮くんがあまりにも自然にスタスタと入っていくものだから、なんだか拍子抜けしてしまった。
その勢いで、思い切って入店する。
入った瞬間に、ふわっと化粧品独特の香りが漂ってきた。
「何を買うの?」
「えっと……このファンデーションだって」
チラシの赤丸がついたところを指差すと、成宮くんは「あぁ」と一言だけ漏らして歩き始めた。
……もしかして、ファンデーションの場所まで知ってるの?
疑問に思いながらも、大人しく着いて行くことにする。
迷いのない成宮くんの足取りは、二階にあがってすぐのところで止まった。
「これ?」
「そう、これ!
……って、なんで知ってるの?」
「隣の家……幼馴染が住んでるんだけど、ここの化粧品愛用してて。よく、荷物持ちに連れ回されるんだ。
……絵ばっか描いてないで、たまには運動しなさいとかなんとか」
「なるほど……。たしかに成宮くん、普段運動しなさそうかも。良い幼馴染だね?」
「……まあ、しないね。
良い人ではあるけど、荷物持ちは迷惑。絵描けないし」
「あはは」
ブレないなぁ。
やっぱり基準は絵か。
笑いながら、会計を済ませる。
余ったお金は好きに使って良いんだっけ?
と言っても、そんなに余っていないけど。
買えてお菓子くらいかなぁ。
多めに渡すって言ってた癖に、お母さんはいつまでも子供扱いが治らないらしい。
高校生の欲しいものなんて大抵、こんな数百円で買えるものじゃないと思うんだよね。