「そういえば、アマリリス、まだ全然完成してないけど。
流石にもう遅いし、お使い済ませたら帰らなくちゃ」
「……そっか」
笑って、極めて明るい声で言ったつもりだったけど。
成宮くんの顔がさらに暗くなったのを見て、自分を思いっきり怒鳴りつけてやりたい気持ちに駆られた。
しまった。ここで帰るとか、そういう話題はダメでしょ!
今の出来事が原因だと取られてもおかしくないよ……!?
私のバカ。そういうことじゃないのに!
慌てて、付け足すように口を開く。
「あ、あの、だから!
アマリリス、まだ完成してないから……よかったら、また来てもいいかな!」
「えっ……」
やっぱり悪い風に取られていたんだろう。
成宮くんが、驚いたように私を見た。
やがて、少しホッとしたように表情を緩めて。
ふっと、柔らかく笑った。
「うん。……来てほしい」
「よかった。じゃあ、また来るね」
「うん」
気まずい空気が和らいで、私もホッと胸をなでおろす。
せっかく成宮くんのことを知れたのに。
気まずくなっちゃうなんて、そんなの嫌だよ。
今日を一緒に過ごした成宮くんは、今までに出会った誰よりも仲良くなれそうな気がしたから。
新しい顔をたくさん知れて、もっと、もっと知りたいって思ったから。
成宮くんは、私の見たことのない世界をたくさん知っているような気がしたから。
私は、成宮くんの側にいてみたいと思った。
こんな風にどうしてもこの人と仲良くなりたいと思うことなんて、初めてだ。
いつも漠然としていたから。
誰か友達が欲しい。誰か理解者が欲しい。
それだけだったから。
普通に、1人の人間に対して“この人と仲良くなりたい”と思えたことが嬉しかった。