バシッ!!!



「っ!!」



乾いた音があたりに響く。


……手を、はらわれた音だ。



成宮くんは、驚いたようにこちらを見たまま固まっている。



私も手をはらわれた衝撃で、思わず立ち止まってしまった。


そんなに力強くはらわれたわけではなかったけれど、少しだけ手がジンジンと痛む。


何が起こったのか一瞬わからなくて、頭の中が真っ白になった。





そのまま、随分と長く時間が止まっていたような気がする。


気付いたら、成宮くんがハッとした顔で私を見ていた。



「あ……、ごめん……!」


「えっ、あ、ううん……その、急に触ってごめん……」


「エリカは悪くない。……手、痛くない?」


「大丈夫だよ。全然痛くない」



本当は少し痛かったけれど、なんだか成宮くんが泣きそうな表情をしているように見えて。


成宮くんの方が痛そうで、本音を言うのが憚られた。



「本当、ごめん……。
俺、人に……触られるの、苦手で。ごめん」


「そうなんだ……。知らずに触って、私こそごめんね」



成宮くんが倒れた時も、触ってしまったけれど。


本当はあれも良くなかったのかもしれない。



……次からは気を付けよう。


そう心に誓う。



「……ごめん」


「いいよいいよ!そんなに謝らないで。
私も悪かったんだし……それより、時間もないし早く行こう?」


「……うん」



気まずくなってしまった雰囲気を流そうとしたけれど、成宮くんは暗い顔のまま歩き出す。


そんなに気にしなくてもいいんだけどなぁ……。


苦手なのは仕方ないし。



なんとか話題を変えようと、話を切り出す。