「……温室。興味あるの?」
「うん……。たまたま見かけたんだけど、ここから見ても綺麗だったから、つい……」
観念した私は、素直にそう答える。
自分で言っててなんだけど、ただの言い訳だ。
綺麗だったから家を覗いてました、が通じればストーカーなんてものは大半がこの世から消えるだろうね。
なんだかいたたまれなくなって、視線をそらす。
だけど、次の成宮くんの一言で、そらした視線はすぐに戻されることになった。
「入る?」
「……えっ?」
「温室。興味あるなら、いいけど」
「…………えっ??」
2回も聞き返して、なおも私はぱちくりとまばたきを繰り返す。
温室って。今見てたあの温室?
キラキラを詰め込んだ瓶みたいなあの?
成宮くんはじーっと私の反応を見ていたけれど、しばらくしてやっと何かを思いついたように、ちらりと家を見て口を開く。
「ここ。俺の家」
「俺の家!?」
「正確に言えば、親の別荘?
……まあ、ほとんど俺一人だし半分くらい俺の家みたいなもの」
「べっ……」
マジか。いやマジか。
嘘でしょ、なんて生易しいものじゃなくて、マジかって言っちゃうくらいの衝撃。
成宮くんあなたって子は……お金持ちの家の息子さんだったんですか。
才能があってお金持ちでイケメンで、うちの高校に入ってるってことは少なからずと偏差値も高い?
神様は二物を与えないとか言ったの誰?
ここにすべてパーフェクトなやつがいるんですけど!?
思わず叫びたくなった。