「いやね、最初は考えすぎかなって思ったよ?
でもさ、ほら、前にエリカが言ってた好きな人の話。
あのどうにも不思議な好きな人像が、ああなるほど、成宮ならそうだったとしてもおかしくないな〜って」


「う…………」



鋭い。


私なりにバレないようにぼかしたつもりが、全然ダメだったらしい。


観念して、手を合わせる。



「……お願い。絶対内緒にして」


「やーね、あたしのことなんだと思ってんの?
言いふらしたりしないって」


「それもそうだけど……私ね、ただ好きなだけで、付き合いたいとかは本当に思ってないから。
だから、本人にも気付かれたくないし、変に気を回したりとかしないでほしくて……」



だって、ついさっき失恋したばかりだし。


誰とも付き合う気がないということは、この恋心がバレたらそれこそそばにいられなくなるだろう。


この恋は、心の奥底に封じ込めておくって決めたんだ。



高ちゃんは怪訝な顔でこちらを見つめたのち、一瞬視線を外し、思い直したようにまた視線を合わせた。



「ふぅん。その気持ちはよくわかんないけど、わかった。
あんたがそう言うなら、あたしは何も知らなかったことにしとくよ」


「……ありがとう」


「その代わり、何か進展があったり、心変わりして付き合いたいと思い始めたりしたらその時は言ってよね。
なんでも協力するし、その時こそ恋バナ美味しくいただくんだから!」


「うん、わかった、ありがとう」



にひっとブレない姿勢で笑い飛ばしてくれた高ちゃんに感謝しつつ、大勢の人に囲まれ賞賛されているセイジを、私はただ遠くから眺めていた。