「……ごめん」



一呼吸置いたセイジが出した答えは、私の耳にも届いた。



「俺は、絵が好きだから。
誰かと付き合うとか、考えられない」



真っ直ぐなセイジの言葉が、空気を揺らす。






……ああ、よかった。


そう思うのと同時に、心を深く抉られたような、そんな気持ちになった。



いたたまれなくなって、女の子がその言葉に反応するよりも先に、そっとその場から走り去る。







最悪だ。最低だ。


人の告白が失敗したのを見て、真っ先に出てきたのが『ああ、よかった』?


確実に私の中を占めている喜びと安堵の気持ちが、やたらと不快感を煽る。



そして、それよりも。


『誰かと付き合うとか、考えられない』


その言葉が、深く胸に突き刺さった。


まるで私が言われているような心地さえして、視界が歪む。


それは実質、私にも望みがないと突きつけられたに等しかった。



私は臆病者だ。


今の関係を壊してしまう勇気なんて、告白する勇気なんて、元からない。


だけど、それでも、もしかしたら、なんて希望を持つのが楽しかった。


もうそれすらも許されない。


勇気を出したあの子と共に、私も失恋してしまったのだ。








袋の中のゴミが、カランと空虚な音を立てた。