時は日曜日。夕方頃。


いつものようにセイジの家で過ごしていた私は、1人キッチンで飲み物を注いでいた。



今この家には、私1人しかいない。


セイジは元気がない花があるからと、1時間ほど前からフラワーフロアに相談に行っている。


今までもコンビニに行くなどで度々留守を任されることはあったが、ここまで長いのは初めてだ。


長くなるようなら念のため私も一緒に行くか、外に出ていようかと申し出はしたけれど、セイジはにっこり笑って「クレオメも終盤でしょ?描いててよ。早く見たいし」と立ち上がりかけた私を制止した。


もちろん私に悪さをするようなつもりは一切ないし、留守を預けるくらい信頼してもらえてるのは嬉しい。


でも、もうちょっとセイジは人を疑うということを知った方がいいような気もした。



……現に、クレオメを描き終えた私は手持ち無沙汰になってしまい、ふと湧き出てしまった“家の探検でもしてやろうかな”という煩悩を抑えながら飲み物を注いでいるのだから。


ここに通うようになってからというものの、セイジは家の全てを自由に行き来することを許してくれていて、温室、アトリエを拠点に、時折こうしてキッチンに来たり、過去の絵がしまってある地下室に行ったり、廊下を眺めたりしている。


しかし、特に用事のない他の部屋、特に2階は一度セイジが倒れた時に入ったっきりで、完全に未知の世界だ。




やっぱり気になるのは……そう、セイジの部屋だよね。


ここに住んでいる以上、どこかには寝泊まりしている部屋があるんだろう。


ろくに電気もつけていない家の有り様を見るに、もしかしたら部屋も無頓着な感じなのかもしれないが、それでも好きな人の部屋というのは気になってしまう。



今なら、ちょっとくらい覗いてもバレないかも———。



そんな邪な気持ちを抑えつけ、すっかり使い慣れたうさぎのコップにミルクティーが十分注がれたのを確認すると、もちろん探検なんてことはせず、まっすぐアトリエに戻る。