「うーん……俺の目に映ってない?」


「目に?」


「うん。ほら、俺もエリカのマーガレットを描く時、最初はそうやって見たから」




そういえば、そうだ。


あの時はあまりの距離の近さにキスでもされるのかって勝手にドキドキして、……それが嫌じゃなくて、自覚した。


私はセイジに、恋をしている。



セイジにまた近付ける——という、邪な考えが頭をよぎった。



「そ、それじゃあ……ちょっと失礼します」


「うん」



目の前に立つセイジとの距離を一歩縮めると、セイジが少し屈んで目線を合わせてくれる。


鼻がぶつかりそうなほど、顔が近い。


前はこの状態でセイジの手に顔を優しく包まれたけれど、さすがに私からセイジの顔に触れる勇気は出なかった。



ドキン、ドキン。



じわじわと顔が熱くなってくる。


色素が薄くて、甘い甘いミルクティーみたいな目が、私を捉えて離さない。



……セイジには悪いけど、花の色どころじゃない。


セイジの目には確かに反射で温室の花がいくつか、それこそ今描いていたクレオメも映っていたけれど、私にはただの反射にしか見えなかったし、それよりも心臓の音の方が気になって仕方なかった。



セイジがパチパチと瞬きをするたびに、その長いまつ毛が揺れている。



まつ毛の一本を取っても美しいなんて、これは惚れたがためのフィルターがかかってしまっているのだろうか。



いや……まだ話したこともなかった頃にも同じことを思ったような気がする。