「もしかして、今なら私もセイジの世界が描けるのかな……」
「えっ」
いつかの私が、家で勝手にセイジの絵を真似て描いた、黄色とオレンジのガーベラ。
あの時はぐちゃぐちゃで、チグハグで、見られたものではなかったけれど、今はあの頃よりずっとずっとセイジのことをわかっているつもりだ。
セイジが私の世界を見られるように、私もセイジの世界が見られたら、きっともっと楽しいのだろう。
「いいね、それ。やろう!」
「えっ?」
そんなことを考えていると、クレオメを描いていたはずのセイジがいつの間にやら私の前に立ち、キラキラとした目で私の肩を掴んでいた。
「俺の世界、描いてくれるんでしょ?」
「え、あれ、私、もしかして声に出てた?」
完全に無意識だった。
こくりと頷くセイジに、ちょっとだけ恥ずかしくなる。
私、どの部分を口走ってた……?
間違っても、セイジのガーベラを真似たことがあるのは知られたくない。
そこは口走ってない……よね……?
若干不安になりつつも、チラリとセイジのクレオメを見る。
ところどころにしっかりとさっき渡した黄色が映えたピンクのクレオメは、やっぱりどう見ても目の前の白いクレオメそのものに見えた。
私もここでたくさん自分の世界を描いてきたとはいえ、それがセイジが描くような、本物に見える絵になったことは一回もない。
自分で考えておきながらなんだけど、私かなりおこがましいこと考えたのでは……?