……どうか、すぐに前に向き直ったセイジに、この顔の強張りが気付かれてませんように。
確かに、ひんやり薄暗いし、不気味だし、ちょっと怖いなって思ったよ?
けど……これじゃあ、怖いとかそれどころじゃない。
今日二回目だ。触れるの。
なんで?
人に触れるの、苦手なんでしょ?
どうしてこんな……しかも私が自覚した瞬間を見計らったみたいなタイミングで触れてくるの?
実は、仲の良い人にはスキンシップ多めな人だったとか?
いや、それならそれで仲良い判定されてるのも嬉しいけど…。
ってそうじゃなくて。
チラッと繋がれた手を見て、恥ずかしくなってきてすぐにそらす。
階段を降りている間会話の糸口すら見つけられなかった私は、そんなことを何回か繰り返した。
長いような短いような、よくわからない時間の後、階段が突如終わって広い空間に出る。
パチンと響いたスイッチの音と連動して、空間が明るくなる。
その瞬間、私は動けなくなった。
そこには、たくさんのキャンバスが重なるように立てかけられていた。
その数、パッと見でも100はあるだろう。
多い。
棚に入っているスケッチブック、たくさんのファイルに挟まった紙、そのどれにもきっと絵が描かれている。
それらを合わせたら、全部で何作品になるの……?
一体……その人生のうち、どれだけの時間を絵に割いているんだろう?