とにかく、落ち着け、私。



何もしていないと絶対またぐるぐると考えてしまうから、大人しくセイジの絵でも見ることにする。



……ここに来ると、何をするにしたってセイジと関わりあるものだから、考えない方が無理な気もするけど。




少し横にずれて、マーガレットを覗き込む。



私が顔を赤くしている間に着々と進んでいたらしいマーガレットは、花びらの三分の一程度が綺麗なグラデーションを帯びていた。



すごい……。


全然進まないって言っていたくせに、イメージが出来た途端こんなにも早い。



まるで、今見ている景色をずっとずっと覚えていられるように、急いで写し取っているみたいに見えた。





カシャッ!



「?」


「あ」



私が気付いた時にはもう、私の手はスマホを取り出してセイジに向けていた。



セイジは音に反応してこちらを振り向くけど、画面の中にいるもう一人は決してこちらを振り向かない。


ずっと、永遠に絵に向き合っている。



「ごめん。つい」


「いいけど……写真?」


「うん。前から思ってたんだけど、なんか、絵になるから」




キラキラした温室を背景にキョトンとした目をこちらに向ける彼は、どうやら自分の綺麗さに気付いていないらしい。



私の言葉を受けて数秒経ってから、ピンときていない顔で「そう?」と首を傾げた。