「…………」
「ん?」
ふと、横から視線を感じることに気付いて、思考をやめる。
じーっとこっちを見つめる高ちゃんと目があった。
目があっても何か言うわけでもなく、高ちゃんはずっと私を見続ける。
「えーっと。何?」
「いや?なんか、百面相してるなって」
「えっ。私、そんな顔に出てた?」
「ううん。全く出てない。ずっと無表情。
でもなんか、心の中で百面相してる気がした」
「なにそれ怖。人の心の中覗かないでよ」
「心の友ってやつさ」
「心の友でも心は読めません」
「あたしのパワーを持ってすれば余裕です」
「怖」
「ちょっとちょっと。遠ざかるのはなしでしょ」
「あはは」
笑いながら、高ちゃんがいる方向とは逆方向に一回引いた椅子を元に戻す。
気を付けなくちゃ。
高ちゃん、結構鋭いところあるし。
特に恋愛ごとだと、サラッと言い当ててきそうで怖い。
多分セイジのことを目で追ったりなんかしたら、すぐにバレちゃうんだろうな。
見ないようにしないと。
次の日曜までの我慢だ。
そうしたら、またあの場所で会えるから。
…………ふふ。
次の日曜が、楽しみだなぁ。